ソーシャルブックマークとセルフブックマークに関する一考察

最近、セルフブックマークが賛否両論を呼んでいるようです。
個人的には、セルフブックマークは問題ないと考えてますので、その辺の話を纏めてみます。

ソーシャルブックマークにおけるブックマーク

ソーシャルブックマークでブックマークされる記事は、基本的には
誰かの心に留まった記事
だと思います。
『心に留まる』理由としては、興味深い記事だから、というのが最も多いでしょうが、
その逆に、大した意味の無い記事だから(逆に興味を持って)、敢えてブックマークする事もあり得るでしょう。
つまり、ブックマークする基準は十人十色であり、誰かにとっては大した意味の無い記事でも、他の誰かにとっては興味深いものかもしれませんし、極論、その記事を書いた本人にとってはブックマークするに値する(興味深い)記事だと思います。
『誰かの心に留まった』の『誰か』が『その記事の書き手』であっても良いわけです。

ソーシャルブックマークにおけるブックマークは、どれも誰かの心に留まった記事であり、その記事の価値は一意には定まらない

蓄積されるブックマークの意味

そうして『誰かの心に留まった記事』がソーシャルブックマークとして蓄積されていきます。
言わば、WWWという巨大な情報の塊に対して、一度『人』というフィルタを通したものが、ソーシャルブックマークなわけです。
この『人というフィルタを通す』というのが、ソーシャルブックマークのミソではないでしょうか。
Googleのように自動巡回ロボットが無尽蔵に情報を収集するのとは違います。
あくまで『人』が、自分の心に留まる記事を探して集めるわけですから。
こうして蓄積されたブックマークは、量の面ではGoogleのデータベースには遠く及びませんが、質の面ではかえって洗練されていると言えるのではないでしょうか。

ソーシャルブックマークによって蓄積されるブックマークは、人というフィルタを通して集められた、より洗練されたデータベースである

ソーシャルブックマークサービスの持つ意味

人というフィルタを通して集められた巨大なデータベースは、残念ながらそれだけでは機能しません。
個々の情報を『繋げる』仕組みと『見せる』仕組みの、大きく2つの仕組みが必要になってきます。
それらの仕組みを提供するのがはてブであったりdel.icio.usだったりするわけです。
(厳密には、情報を集める仕組みを提供するのもソーシャルブックマークサービスです)
繋げる仕組みは、同じ記事をブックマークしているユーザの数だったり、その記事につけたタグであったりします。
見せる仕組みは、ブックマークした日付順であったり、同じ記事をブックマークしているユーザ数順であったりします。
この辺の仕組みの差が、そのまま各ソーシャルブックマークサービスの差になるのだと思います。
そして、はてブの『見せる仕組み』が、セルフブックマークが賛否を呼ぶ原因の一つになっているのではないかと思います。

ソーシャルブックマークサービスは、人によって集められた膨大な情報を繋げて見せる役割を担う

はてブにおけるセルフブックマーク

はてブでの主な『見せる仕組み』は、大きく分けて『注目のエントリー(以下、注目エントリ)』と『最近の人気エントリー(以下、ホッテントリ)』の2つです。
ホッテントリに載るには、それなりに多数のユーザからブックマークしてもらう必要があります。そのためには、まず注目エントリとしてはてブに登場し、多くの目にその記事を見せる事が重要になってきます。
注目エントリは最低3人必要です。
セルフブックマークをするだけで、注目エントリになる条件の1/3をクリアできるとなると、こんなおいしい話はありません。
セルフブックマークはおいしい話なのです。
では何故、おいしいのか?
最も大きな理由は、注目エントリやホッテントリに載ると、普段よりもアクセス数が稼げるからだと思います。
そのアクセス数の先に、Amazon等のアサマシがあるからかもしれません。
でも本当の問題は、どんな理由でセルフブックマークをしようとも、はてブでは好印象を持ちにくい仕組みになっている点だと思います。
『自分のための整理用』にセルフブックマークをしたとしても、『アクセス稼ぎ目的』に見られ、挙げ句に『何でもかんでもブクマして、はてブにノイズを持ち込むな』とまで言われるわけです。
先に述べたように、例えセルフブックマークであっても、その記事の価値はブックマークされた時点では一意に定まりません。
にもかかわらず、はてブの仕組みを通すことでセルフブックマークは忌み嫌われてしまう。

はてブの持つ『見せる』仕組みが、セルフブックマークに不快感を与えている

ソーシャルブックマークの未来像

はてブが現状の仕組みを維持する限り、セルフブックマークは『格好悪い』『スパム』といったレッテルが張られるでしょう。
私自身は、セルフブックマークにしろ何にしろ、人を介した情報の蓄積はどんどんやるべきだと思ってます。
そういう意味で、『自 Blog のエントリを自動的にブックマークすることにより、ソーシャルブックマーク最適化を施す - Kentaro Kuribayashi's blog』にある自動的なブックマークにはあまり好印象を持てません。自分の手で全ての記事をブックマークすれば結果は同じですが、感覚的に嫌というかなんというか。
また、スパムブログ機械的に生成して、それらを自動でブックマークするという行為がもし存在していれば、それはただ闇雲に情報を格納しているだけで何の意味もありません。
そういった情報の格納を制限できないのが、現状のソーシャルブックマークの問題とも言えます。

ここまでソーシャルブックマークセルフブックマークに関して考察してきた中で、ソーシャルブックマークの未来像として以下の事を考えました。
簡単に言えば、各ソーシャルブックマークサービスの持つデータベースの統合です。
はてブdel.icio.usの持つ情報を一つのデータベースにしてしまおう、という話です。
そうして、その同じデータベース内の情報を、はてブの仕組みやdel.icio.usの仕組みでユーザに見せるわけです。
或は自分で作ったWebアプリから、自分の好きなスタイルで参照する事もできるでしょう。
データの格納先を仮想的に1箇所にして、その情報の参照方法を様々な形で提供する。
ま、理想像にすぎない話ですけどね。

結論

セルフブックマーク自体には善し悪しは無い。
はてブの仕組みがその行為に悪印象を持たせているだけである。