脳は眠らない -夢を生みだす脳のしくみ

脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ

脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ

『我々はどうして夢を見るのだろう?』
本書は、誰でも一度は感じたことのあるそんな疑問に一つの答えを示してくれるものだ。


先ほどの疑問は、大きく2つの側面があると思う。
一つは、脳がどのような状態になると私たちは夢を見るのか、
もう一つは、そもそもなぜ私たちは夢を見る必要があるのか。


どちらの謎についても分かりやすい説明がなされており、
中でも特に後者の謎についての話がとても興味深く楽しめた。
その一つにラットを使った実験がある。
MITのマシュー・ウィルソンは、ラットの脳(正確にはニューロン)に電極を付けて迷路を走らせる実験を行い、迷路内で方向を指示する海馬のニューロン群の発火パターンを継続的に記録した。
その後、睡眠中のラットの海馬の活動を調べたウィルソンは驚くべき発見をする。
迷路を走っているときに見られたニューロンの発火パターンがラットのレム睡眠中、つまり夢を見ていると思われるときに再現されたのだ。
その発火パターンは、ラットが夢の迷路の中でどこにいるか、どこで立ち止まっているか、あるいは走っているか言い当てることができるほどに、日中のラットの発火パターンとそっくりだった。そして睡眠中に再現された発火パターンの時間も、実際に迷路を走り抜けるのにかかった時間と同じであった。
ラットが日中に体験したこと(迷路)を、夢の中でもう一度復習しているかのように。
また類似した実験に、小鳥がさえずりを覚えるために夢の中で歌の稽古をしているかのようなニューロンの発火パターンを示した実験もある。
夢は、日々の体験から得られる情報を整理して学習するために、使われているらしいのだ。


その他、夢はトラウマなどの辛い体験を癒したり、夢の中で突飛なアイデアを思いついて大発明をしたり、はたまた自分の思い通りにコントロール可能な夢である明晰夢を見たり、などなど「夢を見る」こと全般についての面白い話が多かった。
また、夢を見るには自己暗示が効果的ということも分かった。夜、横になった状態で「私は夢を見て、覚えておく」と2、3回自分に言い聞かせるだけでよいそうだ。そして目が覚めたら、そのままの姿勢で何の夢を見たか思い出してみる。それをメモやテープレコーダーで記録しておけば、後々に自己セラピーに活用することもできる。
全ての夢に意味があるわけではないが、中には特別な意味が隠されている場合もあるそうで、
ちょっと夢日記でも付けて自己分析でもしてみようかなとか思った。