ソーシャルブックマークとファインダビリティ

ソーシャルブックマークでタグを付けるのは、その対象を分類して整理するためで、すなわち後々でその対象を見つけやすくするためだと考える。
つまり、ソーシャルブックマークでは対象の見つけやすさが大切なわけで、今風に言えば対象のファインダビリティが高いことが重要になる。
というわけで、早速ファインダビリティとは何かを見てみると

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

a. 位置特定可能な、あるいは進路決定可能な性質。
b. 特定の対象物の発見しやすさ、あるいは位置の識別しやすさの度合い。
c. システムまたは環境が対応している進路決定と検索のしやすさの度合い。

上記の本ではこのように定義されている。
記事にタグを付ける行為はbの「特定の対象物の発見しやすさ」を向上させることで、一方、はてブで特定記事を検索する行為はcの「システムが対応している検索のしやすさの度合い」と関わりが深い。
同じファインダビリティでもこれら2つは区別して考えないとごちゃごちゃになってしまう。
我々ユーザとしてはbのファインダビリティの方がより身近な事柄で、それは「どんなタグを付ければ発見されやすくなるのかな」といった問いに還元されるだろう。


先の本の著者は、フォークソノミーの節で以下のように述べている。
フォークソノミー

トレンドを発見したり、欲望のルートを明らかにしたりするための、新たな驚くべきツールである。そして自分が見つけたものを見失わないようにしておくために、フォークソノミーを個人用ブックマークのツールとして利用するのも悪くない。しかしファインダビリティの尺度からフォークソノミーを考えると、それは等価関係や階層関係などの意味論上の関係性を扱えないために、ある程度規模が大きくなると惨めな失敗を引き起こしてしまう。

まさに今、ソーシャルブックマークではここで言う「惨めな失敗」が起きつつある(或は既に起きている)のかもしれない。
「惨めな失敗」が何であるかは本書では具体的に書かれていないけど、「ファインダビリティの尺度から」考えられることは対象の見つけやすさに関すること、つまりフォークソノミーだけでは対象の発見が上手くいかないかもしれないことを示唆しているのだと思う。
(本書ではさらに、オントロジー、タクソノミー、フォークソノミーは相互排他的なものではないこと、情報変化のペースの違いに基づく「ペースの多層化」という考えが重要になるだろう点を指摘する。)


例えば、先日ホットエントリになっていた次の記事を探してみる。
いろいろインストールしてみました - naoyaのはてなダイアリー
とりあえず「mac」タグで探すと、上から15番目くらいで見つかった。
一方、「osx」タグだと上から3番目に位置している。ちなみに「naoya」タグでも同じくらい。
今はまだ見つけられたから良いけれど、一年後に同じ記事を見つけようと考えたとき、果たして「mac」「osx」「naoya」タグで見つかるかどうか。いや、確かに見つかるんだけど、果たしてどれだけの時間をかけて探す事になるだろうか。直接naoya氏のブログを探した方が、おそらくは手っ取り早い。


ただ、もちろんタグ付けの良い面も忘れちゃいけなくて、それはこの記事を探すための手がかりは「mac」「osx」「naoya」だけではないということ。
ざっと見ただけでも「hatena」「apple」「macosx」「まとめ」「ツール」「ソフト」そして「後で読む」等々、数十個のタグがつけられている。
こんな風に、対象への道筋が一意に定まっていない、つまりいろんな方向から対象へ辿り着く事が可能になるという長所も挙げられるわけで、これを実現しているのが他ならぬフォークソノミーだ。
フォークソノミーに依れば、対象への可到達性を高めるという点でフィンダビリティを向上させることができる。
あとは、システムとしてのはてブ側のファインダビリティをどのように改善してくれるのか、そしてそれに合わせてどんなタグをつければ良いのか、といった正のループが形成されれば言うことなしだと思う。


あと、上の記事検索の例は、その記事がネット上及びはてブ内に存在していることを知っているという前提があって、そのときは「naoya」タグで当たりをつける探し方も可能になるけど、そうでないときは「mac」「osx」タグといった汎用なタグでたまたま見つけるケースが多いのかもしれない。
「Mac OSXで便利なソフトウェアの情報をまとめてる記事がないかな」と考えてはてブ内を検索するとき、先のnaoya氏の記事が(少なくともネット上に)存在していることを知っているのといないのとでは、探し方に違いがでてくるのだろうなぁ。
(そっちのファインダビリティの話はちょっとズレてくるので触れませんけど)