フラット化する世界とインドとお好み焼き

starocker2006-06-25

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)

ビジネスにおいてインドや中国にアウトソーシングすることは今や当たり前になっているが、そうしたことを含めた世界の現状を著者は『世界のフラット化』と称し、それを可能にした要因や新たに生みだされたビジネス形態、フラット化できない国々やフラット化の恩恵を享受するテロリズムに対する危惧などなど、多くの事例やインタビューを基にした中身の濃いお話だった。
上下巻構成とボリュームは大きいが、きっとまだまだ言い足りなかったことはあるんじゃないかと思う。
昨今の『Web2.0』ブームも、この『世界のフラット化』という物語の一つの章を構成しているに過ぎないのだな。


さて、そんな『フラット化する世界』の中でしきりに登場するのが中国とインドのお話。
今まではアメリカや日本といった先進国の専売特許であった知的労働(イノベーション)も、世界のフラット化によってやがては中国・インドにアウトソーシングされるだろうといった内容だったが、本書でも随所に出てくるようにもっと末端の仕事に関しては既に多くの部分で中国・インドにアウトソーシングされているようだ。
私も2年ほど前、ソフトウェア開発をするにあたって開発の一部をインドのIT企業にアウトソーシングすることになった。(私がアウトソーシングしたわけではないけど。たまたまその開発現場に参画してただけ。)
そのときは本書で述べられてるほどに目覚ましい成果が得られたわけではなかったが、とても勉強になったと思っている。
開発チームの何名かに日本に来てもらって一緒に開発してたわけだけど、彼らは全員英語がしゃべれるし、また日本語もペラペラのインド人まで居てホントにびっくりした。確か2年くらい勉強しただけだ、と言ってたような気がする。
また、彼らのようにIT企業に勤める人達は本国インドでは結構裕福な生活を送っているようで、休日にはポロ(馬に乗ってボールを打つ競技?ですか?)をして楽しむことが多いそうな。ポロなんて、ポロシャツや靴下の刺繍でしか見たことないよ。


開発が完了し、彼らとのお別れの日が近づいてきたある日。送別会ということで近所のお好み焼き屋に招待した。日本的なものを食べたい、とのリクエストからだ。
確かインドのヒンドゥー教では牛は食べてはいけないと聞いていたので、牛肉はもちろん牛のすじ肉も入っていないことを確認して注文。
すると、彼らの一人が神妙な面持ちでお好み焼きのメニューを眺めているのが目に見えた。
どうしたのか聞いてみたところ、
『私の宗教では、豚は食べてはいけないんです』
彼はイスラム教信者だった。大変失礼した。。
幸いそのお店には、豚も牛も入っていない『野菜焼き』というお好み焼きがあったので代わりにそれを注文。
『ぜひ自分で焼いてみたい』と言うので彼らに任せてみたら、数人でヘラを奪い合って子供のように焼くのを楽しんでいた。
お好み焼きをひっくり返すときの真剣な顔と成功したときの嬉しそうな顔がとても印象的だった。


今は仕事が変わったためにインド人たちと一緒に仕事をすることはなくなったが、きっと昔に比べて彼らへの依存度も彼らからの貢献度も上昇しているはず。
そしてお好み焼きを焼くのも随分上手になってるんじゃないかな。そんな気がする。