春期限定いちごタルト事件

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、2人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。
http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3319

とある理由から<小市民>を目指す高校生の小鳩君と小佐内さん。
そんな二人が巻き込まれる事件、とは言っても所詮は高校生の日常が舞台なわけで、同級生が殺されたりとかは一切出てこない。
女子生徒のバッグが紛失するとか、美術部にある謎の絵の正体であるとか、はたまた「おいしいココアの溶き方」であるとか、日常に潜む(という程でもない)謎に対して、不本意ながらも立ち向かってしまう小鳩君と小佐内さんの物語。
しかしながら本作は、ほのぼの青春小説では決してなく、本格的なミステリー作品として楽しむことができるのがお見事。


タイトルが「春期限定いちごタルト事件」である以上、春期限定いちごタルトにまつわる事件が起きるのは必然で、途中で横道にそれつつも本筋はあくまで「春期限定いちごタルト事件」。
はっきり言ってそれほど大した事件ではないのだろうけど、事件の当事者(特に小佐内さん)にとっては決して忘れられない事件になってしまう。
その事件の解決も含め、本作の見所の一つとしては小鳩君と小佐内さんのロジカルシンキングな物語の展開にあると思う。
ココアの溶き方ひとつでここまで考え込めるのは才能なのか性格なのか。
少ない状況証拠から推理を展開していく様は、ある意味正統な探偵の佇まいなんじゃないかな。
勢いでシリーズ第2弾「夏期限定トロピカルパフェ事件」も買って読んでしまいました。「秋期限定〜」はいつ頃でるのか、とても楽しみ。