紳士 靴を選ぶ

紳士 靴を選ぶ (光文社新書)

紳士 靴を選ぶ (光文社新書)

ここ数年、日本は空前の紳士靴ブームだ。
せっかくだからこの際一足買ってみようかと店へ行けば、しかし判断基準をもたないヒトはただ途方に暮れてしまうだろうし、どうにか手に入れたところで買いっ放しでは、魅力は日に日に目減りする。
僕の個人的な体験を含めたいくつかのエピソードにもあるように、それなりの靴をそれなりに手入れして履くことは大人の男の嗜みというものである。靴の選び方からブランドの特徴、手入れの仕方までをまとめた本書がその指南役になれば幸いだ。
http://www.kobunsha.com/book/detail/03388.html

昨年、革靴を一足購入した。
それまで使っていた革靴がちょっと足に合わない感じがしていたのと、ちょうどそのころ重要なプレゼンっぽい機会を控えていたことから、新しく革靴を買おうと思い、どうせ買うならちょっといいものを買おうと考えた。
いろいろと検討した結果、オールデンのプレーントウモデルを選択。しっかり採寸して頂いたのもあって、とても歩きやすいし長時間の歩行に対しても疲れない。非常に満足している。


さて本書『紳士 靴を選ぶ』は、そんな革靴の歴史を紐解きながら、デザインの流行変遷や欧米・日本の各ブランドの成り立ちや姿勢、未来像を紹介し、最後に靴のケア方法とおしゃれのアドバイスで閉めるという、革靴の基礎知識を一冊に収めた内容となっている。
本書を読んで感じたのが、欧米では靴(革靴)を一生ものとして捉えている人が多いんじゃないかなということ。日本でもそう考えている人は少なくないだろうけど、元々草蛙を履いていた我々の文化とは底の部分で違っているんだろう。例えばこんなエピソードが紹介されている。

かつて、ある紳士が愛車のベントレーを盗まれた。そこで彼は泥棒に対し広告を打つのだけれど(なんて酔狂なんだ!)、内容はこのようなものだった。
「クルマはくれてやるから、トランクに入っていた『ジョン ロブ』の靴だけは返してくれ!!」

「靴のロール・スロイス」と謳われる「ジョン ロブ」にはその他にもエピソードがたくさんあるそうだ。


靴といえばイギリスかイタリア、と思っていたので、日本の靴事情についての章は知らないことばかりでとても興味深かった。
今、日本の若手職人やデザイナーたちが世界で活躍しはじめている。それはかつての優れた靴職人たちの作った土壌のおかげでもあるわけで、さらに

これまでの日本人にはなく今世界で活躍している若手にあるもの――それは本章の冒頭にも挙げた感性だ。

ということで、今や日本の靴は海外のそれと比べても遜色のないものを作れるところまできている。実際、海外ブランドで既成靴ラインの一切を任される方もいる。欧米の著名な靴ブランドだけでなく、これからは国内でも無視できないブランドがたくさん出てくることだろう。
本書のおかげでもう一足革靴が欲しくなったなぁ。