運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術

運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術

運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術

テロ直後の街に観光で行くのは危ないか。殺人事件の発生率は本当に増加しているのか……今どき、運を天にまかせず賢い判断をするには欠かせない確率・統計的な発想のキモを深くわかりやすく説く

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/111335.html

ギャンブルや犯罪、医療に選挙といった私たちの日常と関わりの深い物事を取り上げ、それらを「運」や「偶然」の一言で片付ける前にその意味するところをちょっと考えてみようよという一冊。
日常の不確実性について分かりやすく解説してくれる本は他にもいくつかあって(例えば数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活 - sta la sta)、そういった本を読んだことある人なら特に本書は読まなくてもいいんじゃないかなと身もフタもないことを言ってみるテスト。
とは言え、本書にも面白い部分はいくつかあり、特に気になったのがギャンブル系の話に本書の2章分を費やしている点。

  • 第3章:法則を見極める-なぜカジノは必ず勝つのか?
  • 第4章:カードで勝負-ブリッジ、ポーか、ブラックジャック

がそれにあたる。
私はギャンブルは一切やらないけど、なるほど確かにこれらは確率のお話としては打ってつけの材料で、カジノの裏側(という程のものでもないけど)を知れた気になった。
ルーレットにしろカードにしろ、どうしてカジノは儲けていられるかと言えば、それはカジノが必ず儲かるようにできているからで、なぜそれが分かるかというと、そこには「大数の法則」が働いているから、ということになる。

この法則によれば、何であれランダムな事象を十分な回数繰り返すと、やがて幸運も不運も帳消しになり、ほぼ「適正な」平均値、つまり、真の確率に近い平均値が得られることになる。(p.36)

例えばサイコロ。各目の出る確率は1/6というのはよく知られた話だけど、サイコロを6回振って各目がちょうど一回ずつ出るかと言えば、多分出ない。でも、十分大きな回数だけサイコロを振れば、どの目もおよそ1/6の割合で出る結果が得られる。
で、ギャンブルでもこの「大数の法則」が働いていることは知ってたけど、それらの確率がどの程度に設定されているかは知らなかった。
例えば本書でいくつか紹介されている中からルーレットの話をピックアップしてみる。
ルーレットの勝敗はボールがどのポケットに入るかを当てることができるかで決する。数字をピンポイントで指定してもいいし、ポケットの色(赤か黒)にかけてもいい。当然、当たる確率が低ければそれだけ配当も大きくなる。
では実際に$10をかけた場合の配当の期待値はどのくらいになるかというと、どのかけ方でもだいたい-$0.526になる。意外と小さなマイナスの値だ。流石にこれ以上大きなマイナスになると誰もルーレットで遊ばなくなるのだろう。
カジノとしては大数の法則という後ろ盾があるため、時には大勝するお客が出るかもしれないけど、長い目で見ていれば必ずカジノが儲かる。なぜなら配当の期待値がわずかばかりカジノ側にプラスに設定されているからだ。そしてお客は遊べば遊ぶほど大数の法則に従ってお金がマイナスになっていく。
よくよく考えると、ギャンブルにはまる(=試行回数が大きくなる)ほどマイナスの期待値に近づく訳だから、これはかなり恐ろしい話のように思えてきた。
やっぱりギャンブルに手を出すことは当分ないなぁ。。