タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち

タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち

タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち

タイムマシン/タイムトラベル好きの著者が、文献などに直接当たって、タイムマシン開発の思考実験やデバイス試作に挑んだ物理学者たちについてのエピソードやトリビアを開陳する読み物です。時系列に沿って、当時のSFや映画、新聞報道と絡めて、物理学者たちの意図と成果を解説します。理論などは式を全く用いず説明しており、たとえを使いながらやさしく解説しています。タイムマシン開発という「夢」の観点から見た、20世紀物理学史とも言えます。主な登場人物は、ニコラ・テスラアインシュタイン、エディントン、ホーキング、キップ・ソーン、リチャード・ゴットなどです。

日経BP SHOP|タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち

現実と虚構が紙一重なタイムマシン開発の歴史物語。
SFの世界ではおなじみだけど、未だちゃんとした形ではその姿を示していない(はず)のタイムマシン。その概念の誕生から現在の先端理論までを時系列で紹介してくれる。
目次はこちら。

まえがき 時間が止まった日
プロローグ 新たなる競争

第1章 1895年以前 時間の夜明け
第2章 1895年 最初のタイムトラベラー
第3章 1905年 相対的に解釈すれば
第4章 1919年 時空のゆがみ
第5章 1926年 隠れた次元
第6章 1935年 時空の架け橋
第7章 1937年 未来へのタイムトラベル
第8章 1949年 過去へのタイムトラベル
第9章 1963年 ブラックホール
第10章 1973年 未来からのメッセージ
第11章 1983年 時間の鏡
第12章 1984年 もつれた時間
第13章 1988年 ワームホール
第14章 1992年 時間順序保護仮説
第15章 1994年 ひもつきのタイムマシン
第16章 1996年 重力をあざむく
第17章 1997年 多数の宇宙、多数の時間軸
第18章 1998年 量子の泡
第19章 1999年 超ひも理論のタイムマシン
第20章 2000年 光よりも速く
第21章 2001年 未来からの握手
第22章 2002年 時間のらせん
第23章 2003年 「スコッティ、転送してくれ」
第24章 2004年 ロシアのタイムトラベラー

エピローグ 科学の最前線の向こうには
付録 タイムトラベルの証拠はあるか?

各章ではマジメなお話はもちろん、その当時のSF小説や真偽が定かではないようなお話も混ぜて構成されてるのが面白い。
例えば第2章の「1895年 最初のタイムトラベラー」。
これはかつてエジソンと対立したこともあるニコラ・テスラのお話。最近では映画「プレステージ」でのデビッド・ボウイのテスラ役が記憶に新しい。
映画を見た方ならご存知の通り、テスラは風変わりな電流の実験を繰り返してきた人物。「プレステージ」ではとんでもない奇術道具を発明していたけど、実際のテスラは彼自身の弁によればどうやらタイムトラベルを引き起こす装置を作ってしまった、らしいのだ。
なんでも、実験中に350万ボルトもある巨大な電気のボールが発生し、それに肩が触れてしまったテスラは、時間から引き離され、3次元の世界から抜け出したそうな。

三次元の世界から抜け出した一瞬の体験において、時間はきわめて異様なものに見えた。その状態で目撃した時間は宇宙のように広がっていて、空間の別の次元が形成されたかのように、いまた直前の過去にも直後の未来にも、すべて同様にたどり着けそうに思われた。(p.48)

このテスラの奇妙な体験、最初のタイムトラベラーだという主張は、ほとんどの科学者に信じられていない。しかし一方で、現代科学の発展とともに宇宙の本質が徐々に解明されてくると、それらの多くはテスラが観察したとされる結果に一致しているそうだ。
確かに俄には信じ難いテスラの体験談だけど、でもひょっとしたら彼は本当にタイムトラベルに成功していたのかもと思えてくる。
タイムマシンが完成した際には過去に戻ってそれを確かめてみたい気もするけど、フランク・ティプラーの制約によればそれは難しそうな話だ。
曰く、

つまり、タイムマシンに戻ることのできる過去は、それがつくられた「以降」にかぎられる。たとえば、二〇二〇年に最初のタイムマシンが完成したものとしよう。すると、一〇年後の二〇三〇年には、その装置で二〇二〇年に戻ることができる。だが、二〇一九年のような、それがつくられる前には決して戻れない。(p.113)

これがホントなら、現代社会に未来からのタイムトラベラーが出現しない理由を説明できるけども、例えば恐竜の生きていた時代にタイムトラベルするといったことが実現不可能になってしまう。それはかなりガッカリだ。テスラがもしタイムマシン開発に成功していたら、その時代までは戻れるということか。
実際のところどうなのか、早く未来に行って確かめたいけど、タイムマシンの完成まではまだまだ時間がかかりそうなので、のんびり待つとしようかな。