『収穫祭』 西澤保彦[著] (幻冬舎)

収穫祭

収穫祭

一九八二年、八月。暴風雨の首尾木村で、ほとんどの村民が鎌で虐殺される大量殺人発生。生き残りは中学三年の少年少女三人。九年後、ふたたび猟奇的殺人が……。凶器はまたもや鎌だった。

収穫祭 | 株式会社 幻冬舎

二段組み600ページ(原稿枚数1944枚)の大作。しかし読み始めるとページをめくる手が止まらず、長さを感じることなく一気に読み終えた。
本作の前に『密室キングダム』(こちらは一段組み900ページ越え)を読んでいたので大作慣れしていたのかもしれないけど、それを差し引いても中身に飲み込まれっぱなしだった。


本書は5つの物語で構成される。

  • 第一部 一九八二年 八月十七日
  • 第二部 一九九一年 十月
  • 第三部 一九九五年 八月〜十二月
  • 第四部 二〇〇七年 八月十七日
  • 第五部 一九七六年 五月

第一部はあらすじで紹介されているように村を襲った惨劇の物語。
一夜にして14人の村民が殺害され、そのほとんどは鎌で喉を掻き切られるという残虐な手口。
村の生き残りとなる中学生たちの視点から恐怖の夜が描写される。
村に一体何がおこったのか、知る由もない彼らの前に表れるのは無慈悲な死体の数々。
悪夢から逃れるように暴風の暗闇の中を駆け巡る彼ら。そして訪れる不完全な幕切れ。


第二部以降、生き残った彼らを中心とした、濃密、変質な黒とエロスと呪縛の物語。そしてもちろん惨劇の謎解き物語でもある。
やや過剰とも思える高カロリーな描写が続々と表れるが、しかし満腹であるのに箸を持つ手が止まらない、そんな感じで読み進んだ。
ミステリー部分も面白いが、作品全体を包むドロドロとした雰囲気のほうに引き込まれた。


そして時系列順に展開される中で、最後に最も過去の物語が始まる。
本作のプロローグ的な部分であり、またタイトル『収穫祭』の真の意味が明らかになる部分でもある。
ここが最も恐ろしかった。なんて邪悪なタイトルなんだ。。