『Rのつく月には気をつけよう』 石持浅海[著](祥伝社)

Rのつく月には気をつけよう

Rのつく月には気をつけよう

ベストセラー『扉は閉ざされたまま』の著者が描く、小粋なミステリー短編!!


酒と恋に懲りた者はない。
【ことわざ】(1)飲み会での恋愛話はいつでも謎に満ち、あきない、楽しい、の意。


美味しい酒に美味しい肴。
いつもの仲間が集まれば、謎は向こうからやってくる――。

日本酒×ぎんなん=ちょっと変わったプロポーズ
泡盛×豚の角煮=自分の夢? それとも結婚?
湯浅夏美と長江高明、熊井渚の3人は大学時代からの呑み仲間。毎回誰かが遅れてくるゲストは、定番の飲み会にアクセントをつける格好のネタ元だ。酔いもまわり口が軽くなったところで盛り上がるのはなんといっても恋愛話で――
ブランデー×そば粉のパンケーキ=彼氏の浮気疑惑
白ワイン×チーズフォンデュ=片思いは成就する?

s-book.com:Rのつく月には気をつけよう

美味しいお酒と料理の席で展開される恋愛話にまつわる連作ミステリ。
毎回変わるゲストが「そういえばこんなことがあったなぁ」とちょっとした謎話を聞かせ、主人公3人(主に長江高明)が会話の中から綻びを探し出して見事に謎解きしてくれる。
ゲストの語る話はすべて過去の話なわけで、現場検証やら当事者へのインタビューやらはできないし、これはいわゆる安楽椅子探偵っぽいのかなと思ったり。
著者の作品はどれも論理思考が鋭いなぁと感じていて、本作の主人公たちと一緒になってゲストの話を聞いて(読んで)みて「ひょっとしてこういうことじゃないかな」と思いつく程度の可能性は、大体は「いや、それはこういう理由で違う」と作品中で潰されてしまう。
じゃあ一体真相は何なんだろう?と思って読み進めると、あの会話のこの部分にこんな矛盾やほつれがあったのかと思わずにはいられない展開が待っている。
ラストの話も本作の閉めにふさわしい内容で実に面白かった。