差がつく読書

差がつく読書 (角川oneテーマ21)

差がつく読書 (角川oneテーマ21)

年間数百冊を読破すると語る著者の初めての読書論。精読、多読、とばし読みといった、さまざまな「読書の仕方」と、効率のよい知識の活用法を伝授!目からウロコの読書術!

差がつく読書 樋口 裕一:一般書 | KADOKAWA

昔に比べれば、随分と本を読むようになったと思う今日この頃。
初めはビジネス書や自己啓発本を主に読んでいたけど、徐々に文芸書にも手を出すようになった。最近ではそっちの方が多いくらいじゃないかな。


そこでふと、今まで本を読むときに読書法というか何というかそういったものを意識したことはなかったなと思ったところで目に留まったのが本書『差がつく読書』。
著者は年間数百冊を読んできたという樋口裕一先生。文章術の先生としても有名ですね。


本を読まなくなったと言われる現代人。その要因の一つとして、本を読まない人はそもそも読書の仕方を知らないのではないかと著者は考える。
本を読まないから読書の仕方が身に付かないのか、読書の仕方が身に付いていないから本を読まないのか、答えはどっちとも言い難いけど、言われてみれば確かに読書法なるものをきちんと教わったことはなかったように思う。

そこで本書で、読書の仕方を初歩から解説することにした。本を読みなれない人が、どのように本を読めばいいのか、どのような読書法があるのか。本を読みなれている人も、どのようにすれば、もっと効率よい読書ができるか。そのようなことをまとめている。(p.4)


著者の考えでは、読書には大きく分けて2つの読み方がある。『実読』と『楽読』だ。
それぞれ

  • 実読:何か行動に結びつけるために、情報や知識を得ようとして行う読書
  • 楽読:何かに役立てないと思うのではなく、ただ楽しみのために読む読書

という読み方をさしている。当然、両読書の方法は全く違ったものになるし、どちらかの読書だけを行えばそれでよいというものでもない。

この二つの読書の両方があってこそ、人生は豊かになる。(p.12)

私の知り合いに、一切「楽読」しない人が何人もいる。(中略)だが、その人と話していて、底の浅さをどうしても感じてしまう。人生の幅がない。深く人間を考えることがない。目先のノウハウを追いかけるのはなく、もっとじっくりと社会や人生について考えてほしいと思うことがある。(p.13)

逆に、「楽読」しかしない人間がいる。(中略)だが、その人の浮世離れした感覚には、正直に言って戸惑うことが多い。その人は、現在の政治経済の動きにも、社会全体が経費節減に必死になっていることも眼中にない。自己啓発したいとも思っていない。(pp.13-14)

私は現代人であるからには、少なくとも現代社会でビジネスを担う人間であるならば、二つの読書が絶対に不可欠だと思うのだ。(p.14)


『実読』を行うための心構え。それは

  1. 『実読』は発信しなければ意味がない
  2. すべての本は良書と考えること

という2点。
そもそも『実読』とは何かに役立てたくて情報を得ようとする行為なのだから、読んだ後には当然何らかの行動が伴う。情報を仕事で使ったり、得た知識をブログに書いてみたり、発信方法は様々だ。
2番目の心構えは、この世には面白くない本なんて無い、ということを言っているのではない。つまらない本は確かにある。そういった本を読んだこともある。ただし、「つまらない」というのあくまで個人の感想であり、それがその本の価値を決定するわけではない。単に自分の求める情報がその本には無かったというだけのことだ。渡るべき人の手に渡れば、どの本も良書となる。「自分の背丈にあった本を探して買うのが読者の努め(p.21)」だと著者は述べる。
その他、「多読と精読の併用」「全読と部分読」「読後の発信方法」等々、『実読』のノウハウを色々と紹介してくれる。著者の経験をもとにしているだけあって、どれも説得力があり実に参考になった。


『楽読』は個人が個人の楽しみのためだけに本を読む方法なので、あまり読み方に拘らなくてもいいかなと思う。著者がどういう風に『楽読』してきたかを参考までに知る、くらいの心構えで『楽読』の章は読んでみた。
著者の勧める『楽読』は、「精読するよりも繰り返し読む」「一人の作家を追いかけて読む」「だんだんと守備範囲/関心を広げていく」といったもの。特に「ミステリ作品の繰り返し読み」は今まであまりやらなかったけど今後はぜひやってみようと思った。


本書は読書法の紹介だけでは終わらない。
最後に著者オススメの本を紹介してくれる「私の読んできた百冊」という章が設けられている。いわゆる古典や名作と呼ばれる作品ばかりなのだが、こういった作品をあまり読んだことのない私としては、この最後の章だけでも本書を読む価値があった。
今後は新刊ものばかりではなく、こういった作品も少しずつ読んでみよう。そうしよう。