『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット

黒体と量子猫〈1〉ワンダフルな物理史 古典篇 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

黒体と量子猫〈1〉ワンダフルな物理史 古典篇 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

あの偉大な天才科学者って……こんなイヤな人だった!?  意外なエピソードで綴る物理の歴史

宇宙論量子力学から、コピー機のしくみに生クリームの科学まで! これだけで物理史がだいたいわかってしまう愉快な38篇を収録(全2巻)

わたしたちの社会の基礎をつくった偉大な発明の陰には、開発者たちの献身と科学への愛、そして過剰なまでの競争心があった。たとえば、ベルはライバルを出し抜いて電話機の発明者の座におさまった(でも、本当の発明者は別にいた!)。エジソンは発電法をめぐってテスラと対立し、相手の方法の危険性を示すために電気椅子を開発している。一癖も二癖もある科学者たちの驚天動地のエピソードで辿る物理の歴史。

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90323.html


黒体と量子猫〈2〉ワンダフルな物理史 現代篇 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

黒体と量子猫〈2〉ワンダフルな物理史 現代篇 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

物理の歴史は、エンタテインメントだ! これだけでだいたいわかる科学コラム集

現代物理の難しそうな概念も、映画や小説や時事ニュースに読みかえていくと、意外と味わい深いものだ。光の二重性を理解するには『ジキル博士とハイド氏』を想像しよう。相対論の考え方を知るには、映画『羅生門』が役に立つ。あるはずなのに見つからないニュートリノの謎にはポーの推理小説『盗まれた手紙』で、複雑系を知るなら『ジュラシック・パーク』だ。一味違った視点から物理史を楽しむ科学コラム集。

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90324.html

物理学の歴史を過去から現代まで分かりやすくまとめてくれる一冊。
レオナルド・ダ・ヴィンチニュートンアインシュタインエジソンなどの著名な人物から、タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち - sta la staでも登場したニコラ・テスラといったちょっとアウトローな人物の物語まで、(いい意味で)広く浅く網羅している。
本書の帯にも書いてある通り、「これだけでだいたいわかる科学コラム集」だ。収録されているエピソードはこんな感じ。

  1. ルネッサンス人‐科学するもの―一五〇九年・『神聖比率論』の出版
  2. 革命について語ろう―一五四二年・『天球の回転について』の出版
  3. レンズ職人たち―およそ一五九〇年ごろ・顕微鏡の発明
  4. 天上の異変―一六一〇年一月七日・ガリレオ木星の衛星を発見する
  5. 重力の導師―一六八七年七月・ニュートンの『プリンキピア』出版
  6. 火を引き下ろす―一七五二年七月・フランクリンの凧の実験
  7. トロンプルイユ―騙し絵―一八〇七年・カメラ・ルシダの発明
  8. 誘引の公式―一八二〇年・電磁気の最初の証拠
  9. 利口な機関―およそ一八四〇年代・バベッジの解析機関
  10. 天空の皇帝―一八五二年九月二四日・最初の飛行船の飛行
  11. 無秩序な行為―一八七一年六月・マクスウェルと悪魔
  12. 科学の女王たち―一八七二年・メアリー・サマヴィル死去
  13. ワトスン氏に電話する―一八七六年三月一〇日・はじめて記録された人間の音声の伝送
  14. スリルを求めて―一八八四年・コニーアイランドで、アメリカ初のジェットコースター登場
  15. 恋人は電気―一八八八年・テスラによる交流発電機誕生
  16. 映像のマジシャンたち―一八九三年二月二日・エジソンがくしゃみを撮影
  17. 無線の時代―一八九五年・テスラの無線通信実演
  18. 謎の光線―一八九五年一一月八日・レントゲンによるX線発見
  19. 千の光の点―一八九七年一〇月・電子の発見
  20. 量子にお願い―一九〇〇年一〇月・プランクが量子を提唱
  21. なんだって相対的―一九〇五年六月・アインシュタイン、特殊相対論を提唱
  22. ロケット・マン―一九二六年三月一六日・最初の液体燃料ロケットの打ち上げ
  23. シュレーディンガーの猫騒動―一九三五年・シュレーディンガーの量子猫の思考実験
  24. コピーとっといて―一九三八年一〇月・はじめての乾式コピー
  25. 戦時下の人生―一九四五年七月・トリニティ実験
  26. ギミー・シェルター―一九四七年六月二‐四日・シェルター島会議
  27. 小さい泡の玉―一九四八年・スプレー式ホイップクリームの登場
  28. お手本は母なる自然―一九五八年五月一三日・ベルクロ(マジックテープ)の商標登録
  29. もっとエネルギーを!―一九五八年一二月・レーザーの発明
  30. 小さな世界―一九五九年一二月二九日・カリフォルニア工科大学におけるファインマンの有名な講演
  31. 瞑想するカオス―一九六一年一月ごろ・ローレンツバタフライ効果
  32. カミカゼ宇宙―一九六三年七月・宇宙マイクロ波背景放射の発見
  33. 分子がぶつかるとき―一九九四年四月・トップ・クォークの発見
  34. まいった!―一九九七年五月・ディープ・ブルーがチェスの王者カスパロフを破る
  35. 「空っぽ」をめぐる空騒ぎ―一九九八年一二月・宇宙膨張の加速の発見
  36. ニュートリノ行方不明事件―二〇〇一年二月・太陽ニュートリノ問題の解決
  37. イカロスの墜落―二〇〇二年九月・シェーン、科学の不正行為により有罪
  38. ひもの奏でる楽曲―二〇〇三年一〇月・ひも理論に関する特別番組

その数38エピソード。盛りだくさんである。


著者は「もと英文学専攻で、みずから"物理学嫌い"を認める人間(p.17)」とのことで、なんでそんな人が物理史をまとめることになったのかは大人の事情なのかもしれないけど、そんな著者だからこそ一般の人向けに分かりやすい内容に仕上がっているように思う。
例えば本書では物理学の内容を映画や小説の内容に例えて説明してくれる。重力の話では「アダムス・ファミリー2」、相対論では「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー」、レーザーの発明では「宇宙戦争」、ニュートリノの話ではエドガー・アラン・ポーの小説、などなど。
印象深いのはエジソンの話で、この人はこんなに形振り構わない人だったんだなと。もし子供にエジソンの伝記を聞かせる機会があるなら、こっちのエピソードはとても聞かせられないだろうなぁ。(とは言え、真実を隠してまで過剰に神格化させるのもどうかと思うけど)


38のお話の中でどれかに興味を持ったのなら、さらに専門的な本を探して読み進めるのもいいだろう。個人的にはニコラ・テスラに対する興味がさらに強まった。早速Amazonで伝記を探したらほとんどが絶版。。近所の図書館にでも行ってみようかな。