社内ブログが失敗する7つの理由

http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=954
社内ブログの成功例と未来への展望が書かれたこの記事を見て、
確かにこうなれば素敵だなーと思いつつ、どこか冷めた目線で見てる自分に気付いた。
うちの会社もご多分に漏れず、社内ブログとやらを導入済みである。
しかし、この記事のようにはっきりと「成功」とは言えない状況なのが正直なところ。
はっきり言えば「失敗」である。
ではなぜ失敗したのか。その理由を思いつく限り纏めてみたい。

1.ブログとは何か?を説明しないで始める

恐らく、世のほとんどの人がブログを知っている、という認識は現状ではまだ通じない。
特に年配の社員や女性社員は、その多くが「ブログって何?」「ブログってWeb日記でしょ?」といった認識の持ち主であった。
社内ブログを始める前に、必要最低限のブログに関する知識を提供する事が必要だと思う。

2.社内ブログを使う意図が不明瞭

うちの会社は、「新しい情報共有の形態として社内ブログが注目を集めている。そこでうちも導入しようと思う。」くらいのアナウンスで、ある日突然、社内ブログが始まった。
実際はもっと詳しくアナウンスされていたが、それでも「社内ブログを使って何をさせたいのか?」が全く分からなかった。
一口に情報共有と言っても、同じチーム内の情報共有なのか、それとも部署間をまたがった横断的な情報共有なのか、実に多様な形があると思う。
敢えてその制約を外しているのかもしれないが、それではやはり利用する側は困惑してしまう。

3.社内ブログに書いてよい内容が不明確

そもそも何を書いてよいのか、或は何を書いてはだめかが不明確。
自分の携わっている仕事のことを書いてよいのか(だめなのか)、自分の趣味について書いてよいのか(だめなのか)、特定社員についての愚痴を書いてもよいのか(だめなのか)、
こういったことに関するガイドラインが無いため、利用者はさぐりさぐりブログを書いている印象である。
そのため、社内ブログが活発化する事がない。

4.女性社員が利用しない

上記記事内で、

またブログを活性化させるのは確実に女性のおしゃべり的な日記である。実際、表現の豊かさ、コメントの多さなどネットの社交の力は男性社員には及ぶべくも無い。女性社員が活性化すれば、男性社員は確実に活性化する。

という指摘があった。
それを鵜呑みにするなら、うちの社内ブログは全く女性社員が利用していないために失敗しているとも言える。
なぜ利用しないかといえば、主に理由1と3が関係していると思われる。
特に「女性のおしゃべり的な日記」が許されるかどうかも分からない(理由3)というのが最大のネックな気がする。

5.使いにくいブログツール

どこのブログツールを使っているか知らないが、とにかくうちの社内ブログは見にくい。
特に

  • 誰がこの社内ブログを利用しているのか?
  • 新着記事は何なのか?
  • 社内ブログ内での話題は何なのか?

といった点が全く分からないインタフェースを備えている。
はてなダイアリーはてブに慣れ過ぎてしまった、というのもある)
私の知り合いが社内ブログを始めたというので見ようと思ったが、
まず、その知り合いのブログがどこにあるか分からない。どう探していいかも分からない。
これではモチベーションは下がりまくりである。(結局、知人に直接URLを聞いて解決した)
社内ブログを使う人に対してもそうであるが、何よりそれを閲覧する側への配慮が大切ではないかと思う。
「面白そうだな、自分もやってみるか」という気が閲覧者に起きないようでは、社内ブログは徐々に衰退するだろう。

6.使用していない社員へのフォローが無い

ブログである以上、RSS配信を行っている訳で、効率的に楽しむためにはRSSリーダーの導入も必要だと思うが、そういったフォローは一切無い。
それどころか、導入して今日に至るまで、使用していない社員は置いてけぼりな印象である。
そのため、早い段階で社内ブログに食いついた人ばかりが利用し続け、そうでない人はその存在すら忘れている。
おかげで社内ブログはGEEKSの巣窟になっている。これが会社の望んだ事かどうかも分からない。
ただ、社内の情報共有を促進する目的が在る以上、利用していない社員に対して
「ブログの楽しさ」や「情報共有の大切さ」やその他諸々の情報を提供する事も必要だと思う。

7.情報共有に区切りが無い

「社内ブログはGEEKSの巣窟になっている」と書いたが、このGEEKSたちは実に様々な人達である。
それこそ、下は新人から上は幹部まで、横のつながりもバラバラである。
それはそれで、実に面白い化学反応が起きそうではあるが、上記記事にもあるように

やはりチームブログが柱であり、その補足が個人ブログにするとか、個人ブログは週に一度程度にするとかのガイドラインが必要と考えられる。

現状、個人ブログのみの構成であるが、やはりチームブログというのが必要だと思う。
チームブログであれば、

  • 閲覧者が限定されるため、自分の意見を言いやすい
  • ブログを利用していない人も強制的に参加させるため、結果的にブログを知るきっかけになる

といった利点があるのではないかと考える。
何でもかんでも無制限に情報共有するのも考えものである。


以上、大雑把であるが、実際に社内ブログを導入済みで、なおかつ成功しているとは言えない現状を見て思ったことを並べてみた。
きっとこれ以外にも失敗する理由はあると思う。その点に関してフォードバックを頂けるとありがたい。

『売れるための機能』と『売るための機能』、そこに潜むジレンマ

私の仕事は研究開発、とはいえ多くは研究です。
開発そのものは他の部署の方々が行い、私は製品の仕様検討を主に行います。
その際、重要なのは製品が『売れるための機能』ではないかと考えます。
今のトレンドを眺めたり、市場のニーズを読んだり、顧客の抱える問題点を探したり、
紆余曲折を経て、『売れるための機能』を考えだし、開発部門へ提案する、というのがよくある流れです。
そしてその提案が受け入れられると、製品の次のバージョン辺りでその『売れるための機能』を実装することになります。
それで実際に売れてくれれば万々歳。


しかし、その開発部門はまた別の開発部門から機能実装の依頼を受ける場合があります。
例えば、他の製品と連携するための機能を実装することで、ある意味で抱き合わせ的に製品を売る、というパターンです。
その場合の連携機能は、言わば『売るための機能』。
その機能があっても無くても、その製品単体で考えれば売れる売れないは関係ないですが、その製品を他製品とともに売るためには必要になる機能です。


このように、研究部門が提案する『売れるための機能』と、他の開発部門が提案する『売るための機能』がバッティングする場合があります。
では、当の開発部門はどちらの機能実装を優先するか。
大抵の場合、『売るための機能』を優先するのではないかと思います。
なぜなら、

  • 製品は売れないと開発そのものが中止になる可能性がある
  • 『売れるための機能』を実装しても、実際売れるかは分からない
  • 『売るための機能』を実装すれば、ある程度売れる見込みが立つ

という理由があるからです。
『売るための機能』を実装すると、なぜ売れる見込みが立つのかと言えば、
例の連携機能の実装の場合、連携先の製品Aは既にある程度売れているという背景があるために、『売るための機能』である連携機能を実装すれば、製品Aを購入している(購入予定の)顧客に対しての販売が見込めるからです。
或は、顧客の方から『製品Aと連携できないか』と持ち掛けられたために、その『売るための機能』を優先して実装する場合もあります。その場合も当然その顧客への販売が約束されるようなものです。


ただ実際、『売るための機能』は特定顧客にしか売れないものです。
確かに短期的に見ればその製品は売れます。しかし、長期的に見た場合、特定顧客のみをターゲットにすることにそれほどのメリットは感じられません。
むしろ、新規顧客を開拓することが重要です。そのことは、誰もが分かってます。
そのためには、『売れるための機能』を製品へ実装する必要があります。そのことも、開発部門の人達は分かっています。


しかし、この『売るための機能』と『売れるための機能』にはジレンマが付きまとっています。
先に述べたように、製品は売れなきゃ開発中止です。
逆に、売れている製品は開発に携わる人の数も開発量も非常に多く、『売れるための機能』を次々に実装することができます。(当然『売るための機能』も次々に)
そうなるためには、まず『この製品は売れている』ということを、数字でもって示す必要があります。
そのため、長期的に見て数字をかせげる(かもしれない)『売れるための機能』よりも、今確実に売れることが見込まれる『売るための機能』が優先されてしまいます。
でも実際は、特定顧客以上に売ることは困難です。確かに新規顧客に売れなくもない。しかしその伸びは微々たるものです。
結果、『あまり売れない』という烙印が押されてしまいます。
あまり売れない製品に対して、大胆な機能実装は行えません。
それより、堅実に売れることを選びます。そのため『売るための機能』が次々と優先され、『売れるための機能』はいつまでたっても実装されません。
どう考えても負のスパイラルが形成されていますが、開発部門はどの機能を実装するかに関して、それほど強い選択権を持ちません。
彼らの『上』が決めることです。そして『上』は『売るための機能』をいつも選びます。

この製品を売りたい。そのためには『売るための機能』を優先しなければならない。でも本当に実装すべきは『売れるための機能』なんだ。しかしそれでは製品は『売れない』。

このジレンマというかスパイラルというか、とにかくこの状況を打破したいのですが、そのための方法が分からないといのが正直なところです。
やはり地道に提案を続けていくしかないのか。
それとも他に打開策があるのか。そんな事を日々模索してます。