CM化するニッポン―なぜテレビが面白くなくなったのか

CM化するニッポン―なぜテレビが面白くなくなったのか

CM化するニッポン―なぜテレビが面白くなくなったのか

私はTVを『真面目に』見なくなってから久しいです。
『真面目に』というのは、見たい番組があるからTVを見る、という意味です。
ドラマ、バラエティにしろ、見たい番組の無い私はめったな事ではTVは見ません。
唯一の例外はサッカー関連番組(試合やニュース)ですね。
きっとW杯が始まったらTVに釘付けでしょうw


この本を手に取ったきっかけは、TVが面白くなくなった事よりも
本の帯に『ホワイトバンド大流行』『韓流ブーム』とあった事です。
特にホワイトバンドに関しては、ネットユーザにとっては色んな意味で関心事でしょう。
ホワイトバンドを購入しても直接的には貧しい国々に寄付した事にはならない、という事を知ったのもインターネット上で様々な議論がなされるのを目にしたおかげです。
そんなわけで、1ネットユーザとしてこの本を半ば衝動買いしてきたわけです。


肝心の中身ですが、まだ第1章『テレビでブームはつくられる』の途中までしか読めてませんので
ホワイトバンドの話はまだ分かりません。。
しかしながら、中身は非常に面白いです。それは保証します。


キムタク主演のドラマ『エンジン』の話。
当然ながら私はドラマを見てないので、ホントにそうかは知りませんが
このドラマ、主人公がレーサーの割にはレースシーンが驚くほど少ないそうです*1
その謎を紐解く鍵が皆さんご存知の『タイアップ』です。

主人公がレーサーでなければならないのは、スポンサーがトヨタだから。
トヨタが自社のイメージアップのために「作らせた」ドラマだからです。

本格的なレースシーンには、トヨタ以外の車種も欠かせません。
しかし、それではトヨタのタイアップ広告には成り得ないため、
レースシーンの撮影は実質不可能なんだそうです。
こういったスポンサーへの配慮は、ドラマのキャスティングにも影響を及ぼします。
ライバル会社のCMに出ている役者同士は競演することが出来ないそうです。

例:au妻夫木聡docomo加藤あい→競演NG

『エンジン』に関しても、ヒロインが小雪だったのはそういった配慮の結果だそうです。
今後ドラマを見る際にはキャスティングとスポンサーの関係を見ると、
こういった裏の顔が見えてくるかもしれませんね。


またドラマにでてくる商品のロゴも広告の一部であり、
そのように一見広告とは分からない形で挿入される『見えない広告』を
『プロダクト・プレースメント』と呼ぶそうです。

今後、ドラマを注意して見てください。
ドラマなどの創作番組の中では、商品がそれと分かる形ではほとんど登場していないことに気がつくと思います。そして、はっきりと特定できる商品やロゴがほんの数点だけあります。
それが「見えない広告」、プロダクト・プレースメントです。

そして消費者の頭には、ドラマで使用されている商品が『流行しているモノ』として
知らぬ間に摺り込まれるわけです。
それがブームの種火になるのかもしれません。


そういえば『笑っていいとも』でゲストの友達紹介時にはMacで次回ゲストの顔を表示しますけど
あれもプロダクト・プレースメントなんでしょうね。
ドラマでもパソコンといえばMacがよく登場してきますし。
まあマカーの私としてはMacが普及してくるのは嬉しい事ですけどね。
今後は違った意味でTV(特にドラマ)が面白くなりそうです。


[追記]
ますは一通りを読み終えました。
結論から言えば、『ホワイトバンド』や『韓流ブーム』は例えとしてチラッと引用されますが
そのブームの仕掛けに関する詳細な言及があるわけではなかったです。
あくまでもテレビがこの本の対象でした。


ただ、ホワイトバンドや韓流ブームに限らず、
昨今の○○ブームの裏側を考えるためのヒントとして、
この本に書かれていることは参考になるのではないかと思います。
メディアが発信する情報全てを疑うのではなく、
まずは自分でその情報の真偽や価値を考察して、それから購入等を考える
そういった消費者側の選択権を取り戻す事が大事なのだと感じました。
ただし、情報の真偽や価値を判断する拠り所もまた他のメディアが発する情報である場合は
議論の堂々巡りに陥らないことが大切ですね。


TVがつまらなくなった理由の一つは、
TVにとっての商品は番組ではなく広告であり、お客様は視聴者ではなく広告主である点です。
つまり番組自体が面白くなかろうが、広告主が満足いく内容であれば問題無いわけです。
広告主の満足はタイアップやプロダクト・プレースメント、そしてCMによって得られます。
その結果、視聴者無視の内容の薄い番組が多くなってしまうそうです。


TV等のメディアの目線を広告主から消費者に向けさせるには、
まず消費者自身が変わる必要があります。
はじめの一歩は『気づく』こと。そして『考える』こと。
情報過多のこの時代、では何故情報は溢れているのか。
その情報は誰に向けられたものなのか。
その情報が伝えていないことは何なのか。
それは価値ある情報なのか。その価値は誰が与えたものなのか。
目にする全ての情報を吟味するのは大変ですから、
まずは身近な情報を1つ取り上げて、少し考えてみるのも良いかもしれません。

*1:11回の放送でレースシーンはわずかに3回だそうです