シャドウ

シャドウ (ミステリ・フロンティア)

シャドウ (ミステリ・フロンティア)

人間は、死んだらどうなるの?――いなくなるのよ――いなくなって、どうなるの?――いなくなって、それだけなの――。その会話から3年後、凰介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学5年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? 話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作!
http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3605

向日葵の咲かない夏の作者によるミステリー。読んだのはこちらが最初だけど。
前作の不条理感漂う作風に比べれば若干ホラーテイストは控えめだけど、きっとこの作者の特徴なのだろう、ある種の不安感が心の底辺に蠢くような異様な雰囲気は健在で、前作が好きな方にはもちろん初めての方でも楽しめるミステリー作品だと思う。私的にもとても面白かった。


本作では2組の家族がメイン。
一方は小学5年生の凰介とその父親・洋一郎。母親は病のために他界し、その火葬場から物語は始まる。
もう一方は凰介の幼馴染み・亜紀と父親・徹、母親・恵の3人家族。凰介の母親の他界から数日後、今度は亜紀の母親・恵が徹の勤める病院で飛び降り自殺してしまう。
そして不幸に吸い寄せられるかのように交通事故に遭う亜紀。徐々に様子がおかしくなっていく洋一郎と徹。。


前作と同じように、息子の凰介が探偵役となるのだけど、まるで開けてはいけない扉を開けようとしているかのようで、凰介の行動にハラハラしつつも先を読む手が止まらない。
緻密に張り巡らされた伏線とミスリーディングの罠に見事からめとられてしまった。
本作のテーマやラストには異論反論があるだろうし、彼らに共感したり行動を支持したりってのは素直には出来ないかもしれないけど、それはそれでよいのだと思う。
参考までに作者のお言葉を。ネタバレは含まないけどなるべくなら本書読了後に見たほうがなお良いかな。
東京創元社|Webミステリーズ!(道尾秀介)