フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

伊坂ワールドの名脇役たちが遭遇する、「別の日・別の場所」での新たな事件。


売れないロックバンドが、最後のレコーディングで叫んだ音にならない声が、時空を越えて奇蹟を起こす。伊坂幸太郎の真骨頂とも言える多重の企みに満ちた表題作他、読者人気の特に高い“あの人”が、今度は主役に! デビュー第一短編から最新書き下ろし中編まで、変幻自在の筆致で編んだ伊坂流ホラ話の饗宴。
http://www.shinchosha.co.jp/book/459602/

今日買ってきて早速読了。
本作は4つのお話を含む短編集であり、過去の伊坂さんの作品に登場するキャラクターたちのサイドストーリーとなっています。
なので、もちろん誰が読んでも面白い作品集ですが、伊坂さんの作品を読んだことのある方はもっと楽しめると思います。


『動物園のエンジン』
夜の動物園、「シンリンオオカミ」の檻の前で毎晩のように俯せに寝ている男。と、それを眺めてあれやこれやと勝手な妄想を膨らませる大の大人が3人。ちょっとした都会のおとぎ話、という印象を受けました。
今作では『オーデュボンの祈り』の伊藤さんと『ラッシュライフ』の河原崎さんの父が登場。


サクリファイス
いろんな作品に顔を出してる黒澤さんが、「副業」の探偵業で人探しをするため山間の村を訪れるところから始まる物語。その村では生け贄(=サクリファイス)に関係するちょっと奇妙な風習が残っていた。
相変わらずクールな黒澤さんがカッコいい。


『フィッシュストーリー』
売れないロックバンドが最後のレコーディングで叫んだ声が、時空を超えて奇蹟を起こす。(本の帯より)
いくつかの物語が時系列上で絡む構成は『ラッシュライフ』っぽくもあるなと思いました。ただし『ラッシュライフ』が比較的短い時間の幅で複数(5つだったかな)の物語が緻密に重なるのに対して、『フィッシュストーリー』は時間幅が数十年単位と、まさに「時空を超えた奇蹟」の物語でした。
そして『ラッシュライフ』のあの老夫婦がちょっと意外な場面に登場してました。
作品の冒頭はこちらで立ち読み可能です。
http://www.shinchosha.co.jp/books/html/459602.html


『ポテチ』
またまた登場の黒澤さん。ですが、主人公は「同業者」のあの若者・今村くんです。以前、自力で万有引力の法則を発見した彼がまたしても発見した法則(すごい観察力。。)とちょっと切ない事実の話。『ポテチ』の意味と今村くんの行動の意味、物悲しくもあり温かくもあり。。でも冒頭のキリンのエピソードはかなり微笑ましかったですね。
本作でも彼ら以外の登場人物がチラッと関係しています。


これを機に過去の伊坂さんの作品を読み直してみようかな、なんて気分になりました。