社内ブログでキャズムを超えるには

過去に書いた社内ブログが失敗する7つの理由 - sta la staというエントリ、このブログで恐らく最も息の長い(継続的なアクセスのある)エントリなのだけれど、今回はその続きのお話を書いてみたいと思う。


まず補足。
上記エントリを書いた時期、社内ブログの利用者はかなり少数で、ジェフリー・ムーア氏の『キャズム』で言うところのInnovators(と少数のEarly Adopter)のみが利用していた。
だからこそ、先のエントリで取り上げた『社内ブログの7つの失敗要因』が存在するにもかかわらず、社内ブログは稼動し続けていたのだと思う。
おさらいとして、私の感じた失敗要因とは以下のようなものだった。

  1. ブログとは何か?を説明しないで始める
  2. 社内ブログを使う意図が不明瞭
  3. 社内ブログに書いてよい内容が不明確
  4. 女性社員が利用しない
  5. 使いにくいブログツール
  6. 使用していない社員へのフォローが無い
  7. 情報共有に区切りが無い

これらの要因をInnovators視点で眺めてみると、彼らにとっては実は大した問題ではないように思える。
彼らはブログとは何かを理解しているし、そもそもの利用動機が『新しいもの(=社内ブログ)をいち早く試したい』というものだから、社内ブログの利用意図や書く内容、女性社員の利用状況に関してはあまり気に留めない。
ブログツールの使い難さは、自分達でがんがん使ってみてどこに問題があるかをフィードバックすることで改善を試みている。
社員へのフォローはInnovatorsには関係ない。
情報共有の区切りは、参加数の少ないInnovatorsだけでは区切ったところであまり意味は無い。


上記の失敗要因はもっと多くの人たちに社内ブログを使ってもらうには何が必要かという視点で考えたもので、その対象はEarly MajorityやLate Majorityになると思う。
私自身、社内ブログに関してはEarly Majority(もしくはLate Majority)であることを自覚していて、その私が今現在社内ブログを利用していないことを考えると、まだまだキャズムは超えていないと判断できるだろう。


ではなぜ私を含めたMajorityの人たちは社内ブログの利用に踏み切っていないのか。
恐らく今、圧倒的に足りないのは事例や実績だ。


社内ブログの導入から数ヶ月が経過した今、数十人程度(多くても100人くらい)の人たち(Innovators+Early Adopter)が技術指向の話からビジネスの話、最近読んだ本の話や身の回りの他愛無い話など、実に様々なエントリを投稿している。
社内ブログ導入の目的の一つが社員同士の透明性を向上させることであるので、「あの人はこんな仕事をしていたのか」といった新たな発見もあったりして、なかなかに成功している状況だとは思う。


だからこそ「So What?」と言ってみたくなるのだ。
確かに社内ブログのおかげで、社員一人一人が情報発信する機会を手に入れた。だから何だ?と。それで何が嬉しいんだ?と。
Majorityは「社内ブログがあると誰でも何でも書けるよ」と言われただけでは動かない。彼らを動かすには「社内ブログでブログを続けたことで、こんな嬉しいことがあったよ」と言えなければいけない。
社員の「So What?」に答えるためには、例えば他所の社内ブログ導入事例や自分のところの実績が必要だ。例えば「社内ブログのおかげで新しい分野に興味のある人たちが知り合うことができ、結果として新規のプロジェクトが立ち上がったよ」といった実績があるととても素晴らしい。
残念ながら今はまだその段階まで行くことが出来ていないが、半年後にはそんな動きがあるかもしれないと密かに期待はしている。
それで初めて私も使ってみようかなと考えるのだろうな。


なんだかネガティブっぽい話ばかりになったけども、もちろん社内ブログにはポジティブな面も多い。
その一つが、エグゼクティブな方たちの話が読めるという点。
勤続年数が10年、20年を超える方たちの話は、重みと深みがあって実に面白い。
もしあなたが梅田氏のMy Life Between Silicon Valley and Japanや中島氏のLife is Beautiful、はたまた古川氏のブログの読者であるなら、ぜひともエグゼクティブのブログを全文転載して差し上げたいところだが、それは流石に無理な話。すんません。
ただ、こうしてトップの人間が率先してブログを書いてくれる状況は大変ありがたいことだ。これも社内ブログ成功の一要因なのだと思う。
社内ブログは市場と違い競合する要因が見当たらないので、変化はゆっくりとしか起こらないのかもしれない。
それでも社内ブログがMajorityにも浸透し始めたとき何が起こるか。または何が起こせるのか。
大きな期待を抱きつつ、あと半年ほど眺めていたいと思う。