紗央里ちゃんの家

starocker2006-11-04

紗央里ちゃんの家

紗央里ちゃんの家

おばあちゃんが風邪で死んだと知らされた僕。おばあちゃんが同居していた叔母夫婦の家に出かけるが、従姉の紗央里ちゃんはおらず、叔母夫婦の様子もおかしい。疑問を抱いた僕は、家中をこっそり探し始めるが……。

http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_search.php?pcd=200606000390

第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。
「僕」の一家は、毎年の夏休みに遠方の叔母の家に遊びに行く。特におかしくもない、よくある風景だ。
ただ、今年の夏はちょっと違っていた。
まず祖母が居ない。風邪で亡くなったそうだ。そして従姉も居ない。叔母の話では家出したらしい。
何より異様なのは、「僕」と父親を迎え入れてくれた叔母の格好。叔母の腕もエプロンも真っ赤に染まっていたのだ。
悪臭漂う叔母の家の洗面所の床から乾涸びた指を見つけた「僕」は、誰にも気づかれぬように家の探索を開始した。


物語の冒頭からして異様さと不気味さが漂う。
一見、何も変わらない叔母たちだが、やはりどこかおかしい。
「僕」が探索を進めるうちに、徐々に叔母たちの「狂気」が見えてくる。
ただし狂っているのはどうも叔母たちだけではないようだ。
時折挿入される外部とのやりとりを見ていると、ひょっとしたら世界も狂い始めているのではないかという気になってくる。
そして「僕」自身も。


本作は異常な世界を描いたホラーであり、異常の目でもって異常を眺めることでそれを正常なものとして淡々と物語は進んでいくため、かえって得体の知れない恐さが膨らんだように思う。
あまりグロテスクな描写はないけど(全く無いわけではない)、ぞわぞわする恐怖が好きな方にはオススメかな。